ドライクリーニングは、水を使わずに衣類を洗濯するクリーニング方法です。デリケートな衣類や、特殊な素材の衣類にとって欠かせないお手入れとなっています。
本記事では、基本的なドライクリーニングのメカニズムから、使用される溶剤の種類、そして、従来のウェットクリーニングとの違いや、ドライクリーニングが推奨されている衣服のお手入れ方法なども紹介します。
衣類のケアにご関心のある方はもちろん、大切な衣類を長く美しく保ちたい方にとって、ドライクリーニングの知識は役立つはずです。
目次
ドライクリーニングとは、クリーニング店ならではの特別なクリーニング方法
ドライクリーニングとは「水を使用しない」クリーニング店ならではの特別な洗濯方法です。
「ほかのクリーニングとの違いは?」「水を使わずにどうやって汚れを落とすの?」などの疑問にお答えするため、まずはドライクリーニングとほかのクリーニングの違いや、ドライクリーニングのメカニズムを解説します。
ドライクリーニングとウェットクリーニング、ランドリーの違い
クリーニング店では、ドライクリーニングのほか、ウェットクリーニングやランドリーと呼ばれるクリーニングがおこなわれます。
以下は、3種類のクリーニングの特徴を比較した表です。
ドライクリーニングは、水を使わずに洗うため、水に弱い素材や型崩れしやすい衣類を洗うのに適しています。落とせるのは油性の汚れで、水溶性の汚れは基本的に落とせません。
一方、水に弱い素材や型崩れしやすい素材に付いた汗じみなどの水溶性の汚れを落としたいときには、ウェットクリーニングをおこないます。
ウェットクリーニングの特徴として水を使うことから、生地を傷めたり色落ちが起こったりなどのトラブルが発生しやすいことが挙げられます。作業には高い知識と技術を必要とするため、基本的にドライクリーニングよりも料金は高くなります。
ランドリーは、60℃から70℃の温水と洗剤を使って衣類を洗う一般的な洗濯方法です。油性・水溶性どちらの汚れも落とせることがメリットです。水を使うため、水に強い素材であれば、ほとんどの衣類を洗えます。
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ドライクリーニングで汚れが落ちるメカニズム
ドライクリーニングでは、水の代わりに油性の液体である有機溶剤を使って洗浄します。
ドライクリーニングで汚れが落ちるメカニズムは、油と水の関係を想像するとわかりやすいでしょう。
水の入ったグラスに油を入れると、分離してしまいます。水と油は相対する成分で溶け合うことがなく、水は水、油は油と溶け合います。
つまり、水で洗うクリーニング法では水溶性の汚れを溶かして落とせ、油性の有機溶剤で洗うドライクリーニングは油性の汚れを溶かして落とせるというわけです。
ドライクリーニングに使用される有機溶剤には、主に、「パークロロエチレン」と呼ばれる塩素系溶剤と、石油系溶剤があります。
パークロロエチレンは油汚れを落とす力が強いですが、合皮やスパンコールなどのデリケートな衣類を洗う際には生地を傷める恐れがあります。
一方、石油系溶剤は油汚れを落とす力は弱いものの、デリケートな素材に向いています。
ドライクリーニングの具体的な手順は、次のとおりです。
- 衣類に付着したホコリや汚れを専用のブラシで取り除く
- 衣類を専用の洗濯機に入れて有機溶剤で洗浄する
- 衣類の素材に適した乾燥法で乾燥させる
ドライクリーニングは、洗浄後に高温度で乾燥やプレスをおこなうため、菌やウイルスの除去ができている可能性が高く、衛生的です。
※参考:厚生労働省「ドライクリーニング関係の技術資料」
シミの構造は複雑で、多くの場合、最外層に油溶性の汚れが存在します。この特性を利用し、クリーニング業界ではドライクリーニングを主な洗浄方法として採用しています。
ドライクリーニングは油溶性の汚れを効果的に除去できるため、シミの外層から順に汚れを落としていくことが可能です。
ただし、水溶性の汚れや色素など、シミの内部に存在する他の種類の汚れに対しては、追加の処理が必要となる場合があります。
このように、シミの構造を理解し、適切な洗浄方法を選択することが、効果的なクリーニングの鍵となるのです。
ドライクリーニングのメリットとデメリット
水を使用せず、特殊な溶剤で汚れを落とすドライクリーニングですが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
ここからは、ドライクリーニングのメリットとデメリットを解説します。
ドライクリーニングのメリット
ドライクリーニングには、以下のようなメリットがあります。
- 水に弱い素材や型崩れしやすい衣類を洗える
- 素材の風合いを損ないにくい
- 油性の汚れを落としやすい
水に弱い素材や型崩れしやすい衣類は、水洗いすると縮んだり色落ちしたりすることがありますが、ドライクリーニングであれば、そのような心配をすることなく洗浄できます。
また、スーツやコートなどの繊細な素材の衣類でも素材の風合いを保ちながら洗浄することが可能で、衣類に付着した油汚れや化粧品、皮脂なども、ドライクリーニングならキレイに落とせます。
ドライクリーニングのデメリット
一方、ドライクリーニングには以下のようなデメリットもあります。
- 水溶性の汚れは落としにくい
- 溶剤によっては臭いが残る場合がある
ドライクリーニングで使用される有機溶剤には、水溶性の汚れを落とす力がほぼありません。そのため、ドライクリーニング後に、汗やアルコール、醤油などの水溶性の汚れが落ちていないケースがあります。
また、ドライクリーニング後の衣類に石油のような独特の臭いが残る場合もあります。
通常、有機溶剤は乾燥の過程で揮発するため、臭いが残ることはありません。しかし、工程の中で揮発が足りず、まれに衣類に臭いが残ってしまうことがあります。
ドライクリーニングは自宅でもできる?
ドライクリーニングは、免許を持ったクリーニング師が専用の溶剤と機器でおこなうものであり、自宅では再現できません。
では、ドライクリーニングのマークがついた衣類は自宅でのお手入れができないのでしょうか。
ここでは、洗濯機の「ドライコース」や、家庭で洗濯可能なドライクリーニングマークつきの衣類のお手入れ方法を解説します。
洗濯機の「ドライコース」はドライクリーニングではない
近年、家庭用洗濯機の中には「ドライコース」と呼ばれる機能が搭載されているものがありますが、ドライクリーニングとは異なります。
※メーカーによっては、「ソフトコース」や「手洗いコース」と表記されているケースもあります。
ドライクリーニングではありませんが、ドライクリーニングのマークの他に、洗濯機(洗濯桶)マークが表記されている場合は、自宅の洗濯機でも洗濯することが可能です。
洗濯機の「ドライコース」は、水温を低く設定したり、弱水で洗ったりすることで、衣類への負担を軽減できます。ただし、有機溶剤を使用していないため、ドライクリーニングのような洗浄効果は期待できません。
洗濯機の「ドライコース」は、ドライクリーニングに出すほどではないけれども、デリケートな衣類をなるべく傷めずに洗いたいときにおすすめの洗濯方法です。
関連記事:「ホームクリーニングのリスクとは」
家庭でできるドライマーク衣類のお手入れ方法
洗濯機の「ドライコース」以外にも、家庭でできるドライマーク衣類のお手入れ方法があります。
お手入れ方法は、以下のとおりです。
- スチームクリーニング: スチームを使って汚れを浮かし取る方法。水を使わずに行えるため、ドライクリーニングできない衣類にも使用できる。
- 炭酸水素ナトリウム: 炭酸水素ナトリウムを水に溶かして、衣類を浸け置きする方法。油性の汚れを落とすのに効果的。
- 中性洗剤: 中性洗剤を水に溶かして、布で拭き取る方法。とくに軽い汚れに向いている。
上記の方法は、ドライクリーニングほどの洗浄効果は期待できませんが、軽い汚れであれば落とせるため、必要に応じて試してみてください。
ドライクリーニングの料金相場
ドライクリーニングの料金は、衣類の種類や汚れ具合によって異なりますが、一般的には以下の通りです。
ドライクリーニングの料金は、地域・物価・競合店の有無などによっても異なるため、正確な料金を知りたい場合は、事前に店舗に確認しましょう。
ドライクリーニングが推奨される衣類
家庭で水洗いすると傷んでしまう衣類は、ドライクリーニングがおすすめです。ドライクリーニングが推奨されている衣類には、主にどのような特徴があるのでしょうか。
ドライクリーニングが推奨されている衣類は、以下のとおりです。
- 水洗いでは傷んでしまう繊細な素材の衣類
- 高額な衣類
水洗いでは傷んでしまう繊細な素材
ドライクリーニングは、水洗いでは傷んでしまう繊細な素材の衣類を洗う場合に特に適しています。以下のような衣類は、ドライクリーニングを検討しましょう。
ウールやカシミヤなどの毛製品
ウールやカシミヤなどの毛製品は、水洗いすると縮んだり色落ちしたりすることがあります。ドライクリーニングであれば、縮みや色落ちの心配をすることなく洗浄できます。
シルクのドレスやブラウス
シルクは水に弱いため、水洗いすると縮んだり色落ちしたりすることがあります。ドライクリーニングであれば、シルクの風合いを損なうことなく洗浄できます。
レーヨンなどの繊細な素材の衣類
レーヨンなどの繊細な素材の衣類は、水洗いすると型崩れしたり傷んだりすることがあります。ドライクリーニングであれば、型崩れや傷みの心配なく洗浄できます。
着物
着物も、水に弱い素材で製造されていることが多いため、ドライクリーニングがおすすめです。特に、着物専用の機械を使用して洗浄するクリーニング店であれば、縮んだり風合いが変わったりすることなく洗浄できます。
高額な衣類
ブランド品やオーダーメイド、ウエディングドレスなどの高額な衣類は、ドライクリーニングがおすすめです。
高級品やブランド品を取り扱うクリーニング店のなかには、色落ちや傷などを目立たなくしてくれるところもあります。
高級品やブランド品は料金も高額なケースが多いのですが、大切な衣類を長持ちさせたい方はぜひ検討してみましょう。
まとめ:ドライクリーニングならせんたく便がおすすめ!
ドライクリーニングは、水洗いでは傷んでしまう繊細な素材の衣類を洗浄するのに最適な方法です。油性の汚れを落としやすく、色落ちや縮みを防ぐ効果があるため、デリケートな衣類にも安心して利用できます。
大切な衣類を長く美しく保つためには、適切なクリーニング方法を選ぶことが重要です。水洗いできない衣類は、ぜひドライクリーニングを利用しましょう。
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